コボルドの隠れ里

多分TRPGの話とかします

第12回 「格闘アクションRPG 拳禅無双」TRPG紹介

 

注:今回は割とボロクソ言ってるんで気分害しそうなら読まない方がいいっス。ブラウザバック推奨ってヤツっス。

 

 しゃあっ!灘神陰流「拳禅無双」

 巷では「ルール変更はゴールデン・ルールで禁止っスよね」「実セッションはルール無用だろ」みたいな論争がブームになってるみたいっスけど俺には関係ないっス。前回から1年ぐらい経って世界も私的にもいろいろあったけど新しいTRPGで遊んだら紹介するっス。

 というわけで今回紹介するのはそんなゴールデン・ルールの話が巻頭でいきなり書いてある格闘アクションRPG 拳禅無双」っス。

 

格闘アクションRPG 拳禅無双

格闘アクションRPG 拳禅無双

  • 発売日: 2020/07/06
  • メディア: おもちゃ&ホビー
 

 

  格闘技が大ブームになってる架空の現代で、格闘家になって闘うゲームっス。販売元はFEAR/丹藤武敏先生っス。価格はだいたい4000円っス。

 

 

①キャラクター周り

 キャラクター・メイキングは流派クラスとスタイル・クラスを組み合わせる方式っス。流派がいわゆるボクシングとかプロレスの種目、スタイル・クラスがパワーとかテクニックとかのスタイルを表してるっス。

 一応流派は二つまで取れるんでプロレスと立ち技組み合わせてネオ・プロレスラーっスみたいなことも言えるっス。(良かったな…で…それがなんの役に立つ!)

 

 流派はメジャーな格闘技はだいたい揃ってるっス。中国拳法が八極拳酔拳、蟷螂ががあってやたら充実してるっス。相撲はないけどムエタイはあるっス。

 でもムエタイの人サンプル・キャラクターがいないっス。こ、こんなの納得できない…!

ムエタイは現実だと強いけど創作物じゃかませ扱いなんだ 悔しいだろうが仕方ないんだ。まあムエタイ選手のキャラ立ては難しそうので省かれたと考えられる)

https://dic.nicovideo.jp/a/%E3%83%A0%E3%82%A8%E3%82%BF%E3%82%A4%28%E3%83%90%E3%82%AD%29

 

 物理攻撃が打撃系、魔法攻撃が投・極技系で大別されてるっス。妥当な落としどころっスね。

 あとは加護みたいなのが「奥義」として採用されてるっス。使用回数制限はないけど使用には気合カードというリソースが必要になるっス。覚醒必殺技っスね。

 奥義のコストには表向きになった気合カードが必要になるっス。気合カードは「気合い溜め」という行動で戦闘中1ラウンドに1枚表に出来るっス。なかなか溜まんないっスね。

 このゲーム回避判定に成功しても適応ダメージが減るだけで完全に無傷とはいかないんで、そこは注意っス。割と格闘ものっぽいし殴り合ってればいつかは確実に終わるってことなんでそこはいいと思うっスよ。

  

②ルール周り

 ルールのベースはSRSっス。またSRS…このブログ、ワン・パターンっスね

 システム的な特徴としてはバッド・ステータスの付与がやたら豊富なのが挙げられるッス。

 PCが全員格闘家なので回復役とかバフ役がいなくてアタッカーばっかりなのでキャラの差別化するとしたらまあ…そうなるっスね。

 複数PCがいる場合バッステをムーブマイナーで解除しきれないぐらい与えて適用させることで優位を保つのが基本的な戦術になるっス。現実の格闘技と似た感じっスね。(TRPGはプロレス寄りだと思うんスけど…いいんスか…これで…

 

 後は奥義の使用に気合カードなるコスト必要になるっス。いわゆる格ゲーの必殺ゲージのイメージっス。公式ではトランプを使用するよう推奨してるんスけど数字もスートも参照しないのでトランプである必要は別にないっス。PC人数×10枚もあればまず足りるっスよ。一応表裏は参照するのでカード状のものが望ましいと考えられる。

同時期発売のスチームパンカーズ…トランプちゃんと使うみたいなんスけど…いいんスか…これで…

 気合カードはシーン登場時や戦闘開始時などにもらえるっス。奥義の他にも消費して達成値上昇に使えるっスよ。

 キャラクターのプライド(ライフパスで決まるロール方針っスね)に関わるロール・プレイをするとシーン1回までもらえるっス。。あんまりやりすぎてもクドいのでもらえるのはセッション1回とかで良かったんじゃないっスか…これ…(デッドラのリマークってヤツっス)

 サンプル・シナリオならだいたい使うのは1セッション6-7枚ぐらいだとは思うっスよ。結構余るっス。

 一応戦闘に参加せず観戦する時、戦闘にまつわるロール・プレイをすることでもプレイヤーに1枚もらえるっス。公園最強の生物とかインタビューが出来そうっスね。

 ただ「怒らないでくださいね データゲーなのに戦闘に参加せず観戦してるだけのPLってバカみたいじゃないですか」というのが忌憚のない感想っス。(ミドルのタイマンなら別に判定一発で良いのでは…?しかしなぜ戦闘を…?

 https://dic.nicovideo.jp/a/%E3%81%AA%E3%82%93%E3%81%A0%E3%82%A1%3F%E3%81%A6%E3%82%81%E3%82%A7......

 

 一応実際のセッション時の注意点としては「HPはアイテムで回復だけど基本MPはシーン終了時全回復する」あたりっスね。P93の枠外に書いてあるけど流し見だと普通に見落とすんで注意っス。気力溜めの兼ね合いでミドル戦闘はやる方が望ましいっス。

 あとはブレイクが無い代わりに「奈落落ち」なる選択ルールがあるっス。殺意の波動っスね。戦闘不能時1行動出来る代わりに使うと死ぬんであまりお勧めはしないっス。

 要するにデッドラのスパークっス。デッドラインヒーローズはこのTRPG紹介の第一回なので知らない方は読んでくれると著者がちょっと喜ぶっス。

 

③世界観

 舞台設定はおおむね現代日本っスけど格闘技が異様に流行してるっス。マーシャル・アーツ・キックなんかはここでやれば多分怒られることはないっスね。(7版になってもまだやってるんスかね…?

 刃牙ホーリー・ランドや喧嘩稼業などの格闘漫画とか、餓狼伝などの格闘小説とか、ストリート・ファイターや鉄拳などリアル系格ゲーっぽい世界観だと思えば大体間違いないっス。基本リアル寄りだけどギリギリ波動拳ぐらいなら出しかねない感じはあるっス。

喧嘩稼業(1) (ヤングマガジンコミックス)
 

 公式NPCアイアン木場はいるけどスーパー独歩ちゃんはいないっス。

 住人達も喧嘩大好きで神室町の住人ぐらいには逞しく生きてるっス。TRPG的な多少のトンチキには十分耐えられるっス。タフという言葉は拳禅無双世界の住人のためにある

④サポート

  基本的な各種シートやサマリーの他に、オンライン・セッション用にユドナリウムのルーム・パックが配布されてるっス。結構出来はいいみたいっスよ。こういうのはありがたいっス。どどんとふ終了という人生の悲哀を感じますね

http://www.fear.co.jp/kzm/ 

 非公式のキャラクター・シート保管庫もあるみたいのでオンセで自作する場合は使うといいっス。愛しさとせつなさと心強さを感じますね

http://character-sheets.appspot.com/kenzen/

⑤総括

 ベースがSRSなので「外見上は複数対複数でも実質ボス1人をPC数人でフクロにするみたいな構図が非常に格闘ものっぽくないんスけど…いいんスかこれで…

 というのが忌憚の無い意見ってヤツっス。まあ「TRPGはルール無用だろ」というタイマンにこだわりが無い卓ゲヤクザは気にしないんスかね。やっぱ怖いスねヤクザは

 高速環境が基本の現代TRPGにおいてはボスが悠長に気合い溜めしてると奥義打つ前に2ラウンド目ぐらいで普通に殺られてしまうのでなんとか早めに奥義打てるように運用した方がいいっス。ドロドロの塩試合するぐらいならワンキルされた方がマシっスよ

 同エンゲージの味方のカバーリングがオートアクションで出来るので一応雑魚に庇わせて延命することは出来るんスけど、GMとしてはあまりやりたくないヤツっスね。

 奥義も加護ほどのデータ的決定力が無いのでせっかく打っても普通に耐えられることになる可能性があるっス。コストになる表向きの気合カードもセッション1回でどれか一つ打てるかなあ…ってぐらいしか溜まらないので単発セッションだとだいぶしょっぱいっスね。

 加護ゲーじゃないというと聞こえはいいんスけどSRSから加護取ったら何が残るんスかね小足で決着ついてもあまり説得力と爽快感はないっス

 

 一対一の格闘ものっぽく遊びたいならフィアスコの非公式プレイセットとかの方がプレイ・アビリティは高そうだと思うっス。ナラティブ系に忌憚がない人はやってみるといいんじゃないスかね。公式許可済みのがあるんで声かけて頂けばいつでも喧嘩上等っスよ。

https://harrowhill.rdy.jp/Games/Fiasco/Playsets/Licensed/fight_on_the_street

 逆に言えば拳禅無双の強みとしてははSRSさえ理解してればルールに則って動かしてればキャラクターが出来上がって動くしセッションがデータで担保されるので、そっちの方がいいって人は選択肢には入ると思うっスよ。

 格闘家複数人が無数の悪党の部下に立ち向かっていくB級映画みたいなテイスト(正直具体例はあんまり思いつかないっスね)は向くけど、多分格闘ものと聞いてまず思い浮かべるだろう刃牙とか餓狼伝みたいな格闘家達のプライドをかけたタイマンバトル…みたいな路線には向かないっスね。勇次郎一人に複数人掛かりで…みたいな話になるんスけどちょっと違うっスよね?北斗神拳に二対一の戦いは無いっス

 せっかく格闘ものが題材ならPC同士でミドルに「いっちょ試合すっか!」みたいなのがやりたかったけど向かないっスね。PC間同士の対決ルールもサポートされてるんスけどわざわざSRSでPC同士のタイマンやって楽しいのかと言われるといわずもがなっス。

 サプリが出たら武器戦闘で本部以蔵強化パッチを当てたいみたいな話があるみたいっス。正気(マジ)っスか?ガチでやっちゃっていいんスか?

その前にこのシステム自体が猿空間送りにされないことを祈ってるっス

 まあFEARさんはちゃんとサポートしてるそうなので、少なくとも誤植は修正してくれるんスよね?

 総合的に言うと、求められてること(様々な格闘家同士のタイマンバトル)と実装したシステム(覚醒ゲージとかの格ゲー要素の再現)とSRSの性質(PC数人vsGM)がちぐはぐで噛み合ってないというのが残念ながら正直な感想っス。

 散々愚弄したけど心は常にTRPG愛っスクセとアクは強いけど遊べないレベルではないので実際遊ぶと楽しいシステムっスよ。格闘ものへの愛は感じるTRPGっまあ「楽しいけど一回やったら満足するタイプのシステム」ではあるけど。

 

遊び方の例

 コロナ・ウイルスの影響で開催されていた仙台のTRPGで遊ぶ会さんのオンライン・コンベンションに参加させて頂いたっス。

 また他流試合…こいつ身内いないっスね…

(酷い謂われ様だな まあ事実だから仕方ないけど)

 古武術武田惣角由来の合気術とかなんかそんな設定)の継承者の女子高生、武田志保さんをやってきたっス。カウンター型投げキャラっスね。

 夢枕獏東天の獅子」のスナスロウ(志田四郎、姿三四郎のモチーフっス)を思い浮かべてたんスけどスナスロウと武田惣角がごっちゃになってたっス。読んだのが4年前ぐらいだからうろ覚えなのは仕方ないんだ。

 『~っス』口調で喋る安易なキャラ付けの宇崎ちゃんだかマネモブをやろうとしたらやたら朴訥なバトル・ジャンキーみたいな感じになってしまったんだ 手癖でやると毎回こんな感じなんだ。PLの地の性格だと考えられる。

 あんまりしゃべるのがうまく行かない時は逆にうかつにセリフ喋らず無口強キャラムーブをやるとそれらしくはなるんだ。

GMや他PLのレシーブの負担が増えるから正直あまり良くないプレイングだと考えられる

 プロレスリングお嬢様ゲーミングお嬢様)とめっちゃいい人な銭ゲバ喧嘩師(悲しい過去…)と共闘してきたっス。楽しかったっス。

 散々タフ語録で書いたけどこのセリフで締めるっスよ。

 

 みんなでセッションするから尊いんだ 絆が深まるんだ

 

第11回 「フィアスコ」 TRPG紹介

 久しぶりだな。世間ではTRPGフェスがやっているようだが俺には関係ない。モンスターハントしたりゴッサムであくとうをシバいたりしてたが、TRPGの紹介も仕事の一つなのを俺は忘れていない。マルチワーカーだ。

 

 汎用システムといえば、おまえは何を思い浮かべるだろうか?サイコロフィクション?SRS?BRP?CoCか?最悪『システム?CoC?もしかしてTRPGのこと?』とかいいそうなところを「CoCがBRPを用いたTRPGのシステムの一つである」ことを理解してるおまえはとっくにニュービーはそつぎょうして7版にそなえていることだろう。というかそういう層は多分このブログは読んでくれてないだろう。逆に好きな汎用システムはマギウスとか言い出される方はぜひ当時の話を伺いたい。

 一個のルールを覚えるだけでいろんなゲームで遊べるようになる、というのはなかなかにストレスが少ない。おじさんになると新しいことを覚えられなくなるものだ。カッコいいこと言っててもお腹が出てくるのだ。

 今回は「キミと大惨事を起こすTRPG」こと『フィアスコ』の紹介だ。

http://harrowhill.rdy.jp/Games/Fiasco

 製作元は デザイナーはジェイソン・モーニングスター氏。翻訳はハロウ・ヒル。翻訳された日本語版が出回りだしたのは2017年ぐらいだ。

 おまえのだいすきなCoCと同じでいわゆる『洋ゲー』だ。

 

①キャラクター周り

 『フィアスコ』は汎用ルールであり、基本的に共通の世界観みたいなものは存在しない。

 プレイセットという舞台設定資料を用いてキャラクターを構築していくことになる。いわばロッテとかブルボンとか森永みたいなものだ。

 フィアスコにはキャラシートらしいキャラシートは存在しない。ただ、設定を書くメモ書きは結構たくさん必要となる。

 プレイセットにはキャラクターの設定表が載っている。隣のPCとの間に設定(作中用語で『要素』)が配置されるので、それを元にキャラクターを造形していくことになる。

 『要素』は大きく分けて『人間関係』、『動機』、『場所』、『物品』の4つに大きく分けられる。それぞれが6×6の36種類ある感じだ。『人間関係』だけはどのPC間にも必ず一つずつ割り当てられることになる。。

 セッション開始前にダイスを参加人数×4個振り、この数字のダイスを拾ってPC間の『要素』を一つずつ割り当てていく、といった感じだ。6×6の表の片方ずつを2つのダイスを使って決めることになるので、結果としてPC間には2つずつ『要素』が配置されることになる。

 各種の『要素』(特に『人間関係』)はPC間の関係性と定義づけられているが、実際はどちらかのPLが「これちょーだい」と分け合っていく方が多いだろう。

 順番に一つずつ配置して結果4周することになる。好きな所に配置することができるので、他人がクソマジメに手酌で自分のところにカッコいいだけの設定生やそうとしてたら他PCの所に「おまえ何エモいだけのやつやろうとしてんだよ!これやれ!」と振ってみるのも楽しいだろう。

 両隣りに配置された『要素』を全部詰め込むと詰め込み過ぎになるので、だいたいは各PC2つずつぐらいとりにいくことになる。ブルボンバラエティミックスをおまえ一人で食べようなどというのは欲張り過ぎだ。おまえはルマンドエリーゼを選んだらホワイトロリータは隣の人に譲ってやれ。(パピコが配置されてる場合はその限りではない。)

②ルール周り

 キャラクターが出来上がるのがオープニングフェイズだとしたら、【第一幕】が始まる。いわばミドルフェイズのようなものだ。 

 このゲームの大きな特徴の一つが「GMが存在しない」ということだ。みんなで話し合って展開を決めていくことになる。

 進行はいわゆるサイクル制に近い。一人一手番シーンを行うことになる。

 このゲームの進行の根幹をなすのは「2択」だ。

 一シーンにおいて、プレイヤー達はシーンの展開をどちらかの方法で決めていくことになる。

 一つは自分が提示した展開の選択肢を他のPLに選んでもらう『確立』

 もう一つは周りが考えた展開の選択肢をおまえが選ぶ『解決』の二種類だ。

きのことたけのこどっちが好き?」を周りに聴くのが確立、「きのこかたけのこどっち食べる?」をお前が選ぶのが解決だ。

 

明治 きのこの山 74g×10個

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明治 たけのこの里 70g×10個

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 おまえが選んだ選択肢がポジティブな選択である場合が白のダイスを、ネガティブな場合は黒いダイスをPCのうちだれかが獲得することになる。どっちがポジティブでどっちがネガティブかは主観で決めて構わない。白黒のバランスとりたくなったり白いダイスばっか取りたくなるかもしれないが基本的に展開は「どっちが面白そうか」で選んで大丈夫だ。

 第一幕が2サイクル終われば話に何か変異が起こる【転落】、いわばミドル戦闘が挟まり、さらに2サイクルの第二幕が始まる。それが終わればお前たちがそれまで獲得したダイスを元に結末を決める【残響】が始まる。いわばクライマックスフェイズだ。【残響】表の結果をもとに一人一シーンぐらいエンディングをやって終わりとなる。

③世界観

 先述の通り決まった世界設定というものはないが、作品名の『フィアスコ』が意味する通り基本的に『台無し』とか『大失敗』が起きうるものではあるという見解は共通しているようだ。

 あまり「ぼくのキャラクターの美しく完璧なストーリーライン」みたいなものには期待しない方がいい。おそらく多くのTRPGから、そして特にこのゲームからは遠いものだ。

 とりあえずルールブックでは4つのプレイセットがサポートされている。GTAみたいなやつとレッドデッドリデンプションみたいなやつと遊星からの物体XみたいなやつとD&Dみたいなやつだ。

④サポート

 こうしきサイトにいろいろ有志の方の解説マンガとかが載ってたりする。興味があれば見てみるといいだろう。

https://harrowhill.rdy.jp/Games/Fiasco

 

 ルールブックの4つの他にも「フィアスコ」は実に多彩な舞台設定のプレイセットサポートしている。上のサイトの右上のフィアスコのタブのプレイセットから「公式」「許可済み」みたいなのを見るといい。 

 ルールブックのリプレイはティーだのジョイがどうこうだの「アメリカ人がアメリカ人のキャラクターを作る」という構造上馴染みのない登場人物の名前がが8人出てくるせいでなんかよく分かんなかったが、一度遊んでみるとそこまで複雑ではない。

 公式のものはアメリカが舞台でとっつきづらいものが多いように感じたが、投稿作は魔法少女ものとか餓狼伝とかバジリスクとかいろいろあるのでいくつか気になるものはあるのではなかろうか。

 気になるプレイセットはちょうど今開催中のTRPGフェスが舞台の「かつてJCGと呼ばれたイベント」だ。

 なお、プレイセットは結構大変そうだが自作することも出来る。うぃんぐさんの作ってたハイスコアガールとかゲームセンターあらし的な『90年代のゲームセンター』が気になる。
値段に関しては俺は大昔にイエサブで買ったが2500円前後、コノスの電子書籍版が1500円、物理書籍版が2500円ぐらいだ。

 amazonでは英語版しか取り扱ってないとのことだったが現在日本語版も扱ってるようだ。ただ3500円ぐらいするので注文翌日届かないと死ぬアマゾン細胞感染者以外はコノスとかで買うといいだろう。

 

⑤総括

 GMレスで驚くほどに軽い。そしてちゃんとTRPGをやった気分になる

 GMが必要ないため事前準備がほぼいらないというのは大きい。ラクだ。

 自分のやりたい事がある場合は他人に成否を任せる、やることが思い浮かばなければ二択をもらって自分で選ぶ、何もかもが都合よく行くわけではないだろうし、進行に詰まることは少ないだろう。

 GMレスなため対立型みたいなムーブが比較的やりやすいのもポイントだ。協力型だと扱いにくいややヒールに近いキャラクター造形もはまりやすい

 他にはクライマックスフェイズがものすごくあっさりしてるのがポイントの一つだ。

 派手なアクション映像やらなにやらが展開できるわけでもないTRPGというゲームの性質上、クライマックスはあっさりしていていいのかもしれない。平日夜やって時間食うのはだいたいクライマックスの戦闘だしな。

 クライマックスにシーンを割かない関係上いわゆるバッドエンドに向かう確率が高いため、いい方向で終わるとは限らないためちょっと物足りないところはあるかもしれない。

仕事から帰ってきて9時に集まって日付が変わるぐらいに終わる3時間だけセッションやって翌日の仕事に備えて寝るシステム」としては非常に優秀なのではなかろうか。

 ダイス目部分が中盤あたりであまり意味をなさなくなってしまう点、ミドルで黒ダイスばっかり引いて不遇だったキャラクターが苦難を糧に最後に幸運が巡ってくる…みたいな展開があまりできないのは構造問題かもしれない。まあ、シンプル方面に完成度は非常に高いルールなのでこれでいいのかもしれないが。

 あとなんかこのゲーム、たまに【動機:セックスしたい】みたいなものが含まれているせいか一応18禁要素が含まれているとされるが普通にやる限り別にエッチな要素もグロイ要素もない。

 逆に18禁なことを逆手にとって南国アイスホッケー部+ぬきたし+下セカみたいなプレイセットをやってもいいということなのだろうか。絶賛開発中なのでやりたい生ハメイトと青藍島住人としもねた星人とSOX隊員は是非連絡をくれ

他にもグルメバトルものとかレディ・プレイヤー・1路線とかボディビルものとか真面目(?)なプレイセットの自作も考えてるので遊びたいところだ。

 

 

満足度 95%

おすすめ度 ☆5

好み ☆5

 

こんな人にオススメ

TRPGはストーリー要素だけあればいい

・自分のPCがひどい目に合っても許せる

NPCっぽいPCがやりたい

翌日仕事でクライマックス戦闘をやってる時間がない人々



遊び方の例

 

 今回遊んだのは『仁義なき抗争』。

 一言で言うと「ヤクザもの」、もうちょっと詳しく言えば「先代会長が殺害されて組員達が跡目を巡ってバトルするタイプのネオヤクザもの」だ。龍が如くとかアウトレイジとかジョジョ5部とかそんな感じの雰囲気感だ。

 暗殺されたマツタケ親分の跡目を巡る権謀術数に、カエンタケのサイボーグヤクザ・杯焔で挑んできたぞ(カエンタケ指定暴力団竹書房→きのこvsたけのこ抗争の延長で出てきたものだ。ツキヨタケの人とかもいたぞ)

 

 「お前マジックマッシュルームでもキメてんのか?」とか言われたが、その時キメてたのはカエンタケもとい単なる発泡酒なので問題はない。

 マツタケ親分と妻の仇を取るべく調査を続けるスギノコ組の杉上左京(隣の人のPC)だが、彼の妻とマツタケ親分を殺害したのは、なんと五分の兄弟の盃を交わした杯(ややこしい)!だがサイボーグである杯は自分の意志とは無関係に操られていたのだった!裏で絵図を描いていた真犯人と『黄金の真実』とは……!みたいな感じでなんか意外とちゃんとサスペンスになって良かったぞ。残響で黒6ゾロ引いて返り討ちにあったが。

 

 よっぽどバカ一辺倒でやらないかぎりある程度ちゃんとストーリーは出来るので終盤に向けて正気を取り戻すといいだろう。

 なんとなくプレイ感覚は「デトロイトビカムヒューマン」やFGO紫式部殺人事件のやつを思い出すな。

 

パープル式部 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

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 このゲームをやる上で「TRPGのストーリーに必要なシナリオは『あらすじ』でかまわないということ」「もしかしたら俺がヒールを引き受けることになるかもしれないこと」位の心構えは意識しておくことは重要そうだ。










TRPGオタの俺が女子高の文芸部の顧問になって困達とセッションするハーレムラノベ 第6話


第6話 開けろ!KP/GM市警だ!

 

 

梅雨の明けた頃のとある活動日のことだった。

「ゴローちゃ〜ん、ガッシュクやろうよ〜ガッシュク」

ふわりが唐突にゴネ始める。ホントいつもこいつ唐突だな。

「どうした。なぜ急に合宿?ゆるキャンでも観たのか」

「見たよ。いや、そうじゃなくてさー、理由なんてどーでもいいじゃん。高校一年生の夏だよ!一生に一度しかないんだよ。海だよ。リア充だよ。青春しよーよゴローちゃん、セーシュンだよ!」

妙な動きをしながらゴネ始めるふわり。動きがうるさい。

「俺から最も遠い言葉を連呼するのやめろ」

 悪いが俺はその手のものに縁が無い。

「……泊りで、セッションするの、楽しそう」

あくまで淡々とした態度でありながら、テンションが上がっていることを主張する小雪。意外な所から賛成意見が出た。

「……TRPG合宿、わたくしも賛成ですわ」

 もう一件賛成が上がった。今日の月子はやけに真剣な様子だ。いつもの「皆様と一緒に出かけるのは素敵」とかそういうのかと思ったが、どうやらそういうわけではないようだ。何かを決意している奴の目だった。

「…わたくし、GMをやってみたいですわ」

「ほーう、いいじゃん」

 教え子の思わぬ発言に、思わず口元が緩む。月子はいつかGMに興味を示すだろうと思ってはいたが、案外早かったようだ。

「ゴローちゃん以外のGMでセッションするの、初めてだ!楽しみ!」

「十文字先生も、前にたまにはプレイヤーをやりたいとおっしゃっていたので、わたくし、頑張ってみることにしますわ!」

「では、合宿の日は白鳥さんのGMデビューということでよろしいですかね」

 カツカツと黒板に『GMデビュー』の文字を書いていく花凛。いつの間にか仕切り始めている。

 せっかくだから、文学館に行くとかなんとか理由をこじつけつつ合宿に行ってみるのは悪くはないだろう。昔も年一ぐらいで例年合宿に行っていた記録があるようではあるしな。

 

「で、どこか行きたいところはあるのか」

「海!ハワイ!インスマス!」

「却下。海外は予算の関係で、インスマスは実在しないから無理だ」

「え!?マ!?インスマスって実在しないの!?」

 ショックを受けるふわり。インスマスラヴクラフトの創作した架空の街なので、当然ながら、邪神たち同様、実在しない。いや、本当は邪神は実在するのかもしれないが、神の存在証明はすなわち悪魔の証明なので、ここでは『ない』ということにしておく。 俺が信じるのはダイスの女神ぐらいだ。 

「……文学に、関係ある場所」

 まともな意見が小雪から出た。

「いいな。文芸部らしい。具体的には小雪はどこに行きたいんだ?」

「……マインヘッド」

「それは、何処なのですか?」

「……イギリス。クラークの、故郷」

だから海外はNGだと言っただろう。

「イギリス!オックスフォード大学とストラトフォードアポンエイボン には一度行ってみたかったのですわ!」

 トールキンシェイクスピアか。結論から言うと、悪いが、行けないぞ。パスポート作ったりなんだりでめんどくさいんだ。

「みなさん、いい加減にしてください。話がまとまりません」

痺れを切らした様子で机から立ち上がり仕切り始める花凛。

「やっぱり委員長じゃないか」

「うるさいですね……」

「そういうイインチョーはどこに行きたいのさ」

「ですから(中略)基本に返って、『吾輩は猫である』で夏目漱石等はいかがでしょうか」

花凛らしい、非常に教科書的な回答だ。

「悪くはないが、漱石は東京だな。合宿には向かないんじゃないか?」

「……ならば、『伊豆の踊り子』で伊豆半島などはいかがでしょうか」

 静岡県か。手ごろな近さだ。ふわりの海に行きたいという意見とも合う。熱海の方には太宰ゆかりの旅館などもある。悪くはない。太宰氏自身は割とガチでダメ人間だが。

 そして、奇しくもTRPGの大規模イベント、TRPGフェス(旧JGC)は伊豆の隣、 熱海で開催される。俺は、普通に仕事で行くことが出来ないが。

「では、伊豆ということでみなさんよろしいでしょうか」

「OKです」

 黒板の伊豆という文字に丸を付ける花凛。

 というわけで、合宿は伊豆に行こうということになった。

「ちなみに、先生はどこが良かったんですか?」

「……小田原。富野由悠季夢枕獏

「めちゃくちゃ近場じゃないですか!」

「……じゃあ、ドストエフスキー。モスクワ」

「海外!」

 

というわけで、ここから一度「合宿(月子GM)編」に突入する予定となる。

TRPGオタの俺が女子高の文芸部の顧問になって困達とセッションするハーレムラノベ 第五章

第五章 ダブルクロスーーーそれは裏切りを意味する言葉。

「今日はダブルクロスやるぞ。オレのイチオシだ」
ダブルクロスーーーそれは裏切りを意味する言葉。
 FEARの矢野俊作先生(今は独立されたようだが)著、傑作現代異能TRPGだ。1958年、お医者さんと兵隊さんになり損ねた鬼才、山田風太郎の書いた伝奇時代小説『甲賀忍法帖』に端を発し、少年ジャンプ、ライトノベルに受け継がれる、いわゆる『厨弐異能バトルもの』のTRPGだ。レネゲイドウイルスという特殊なウイルスに感染した異能者、オーヴァードと、レネゲイドウイルスに心を蝕まれた怪物、ジャームの戦いを描く。
 イメージとしてはアメコミの XーMENや 魔法少女まどか☆マギカなどに近いだろうか。ぶっちゃけ、いわゆる「異能バトルもの」なら時代や舞台を差し替えて何でもできるので、若干重いルールさえ覚えてしまえばかなり取り回しのいい システムとなっている。俺が育ったゼロ年代オタク文化と相性がいい反面、ちょっと今の子には古いんだろうか。古さで言えばクトゥルフ6版が言えた義理ではないが。

 正直、若いプレイヤーたちの間では今の TRPG の代名詞はクトゥルフ神話 TRPG みたいになりつつある。だが、 COC が好きな人と TRPG が好きな人の間では、スプラトゥーンFPS が好きな人ぐらいの差がある。 TRPG 業界もクトゥルフ以外にも、本当に無数の大量のシステムが出回っている。 最近では同人の TRPGシステムなんかもブームだ。 正直俺もすべて遊び切れているわけではないし、読み切れない雑誌のページや増えていくテレビのチャンネルをすべて把握は出来ていない。が、スプラトゥーンしかやらない人にも他に面白いゲームはたくさんあるということを知ってほしいという思いはある。本当にいろんな人が、いろんなジャンルのゲームを作っている。その中にきっと、自分が気に入るシステムがきっとあるから。
 なにより、単純に同じシステムばっかやってると飽きちまうからな。3つぐらいのシステムが遊ばれてるコミュニティが、長続きすると言っていた先達がいたなぁ。
 ホラーゲーでも、インセインの他に作中の2018年ではまだオーパーツとなるスクリームハイスクールが販売されるが
 そんなこんなで、今回はダブルクロスをやることにした。 異能バトルものというのは、なんだかんだで特にオタク人種には馴染み深いジャンルであろう。

「んじゃ、ハンドアウト配るぜ」
 ハンドアウト、近代TRPGにおいての発明の一つである。キャラクター作成時にPL達に「ここは踏まえてね」という内容を三行程度で表したものとなる。多くの場合、今回そのPCが関わるNPCが書かれていたりもする。
 多くの場合おとなしく従った方が良いとされるが、細かい変更は可能だ。例えば今回のPC①の不確定な切り札くんを不良高校生にしたい、みたいなのはいい感じのアレンジだろう。
 え?PC①を新任教師にするのはどうかって?……まあ、不可能ではないだろう。

「アタシPC①?マジ?」
マジンガーZERO。良かったじゃん。主人公だ」
「マ!?右眼疼いちゃう感じ!?恥ずかしいやつじゃん!でもがんばるー。あっでもさ、変身したら服脱げちゃうんじゃね!?ヤバいじゃん!」
 それは、デモパラ/パラブラなのでゲームが違う。SNE版変身ダークヒーローTRPGだ。ウイルスではなく超能力寄生虫によって異能者となる。ファントムペインだ。焼き肉を食べて回復したりする妙に身体性にこだわった不思議なゲームだ。

小雪は閃光の双弾か」
 コクリとうなずく小雪
「二丁拳銃、かっこいいよな」
「……リベリオン、見た。あんな感じで、行く」
 ライトオタクと見せかけて、ちゃんと原典を漁る傾向にあるのが、この少女の美徳だ。
「……無感情ロールは、好き。……アンドロイドとかも、やってみたい」
 ネクロニカあたりを与えてみればいいのだろうか。ポストアポカリプスな世界で美少女ゾンビロボゲーだ。詰め込み過ぎだろう。インコグ・ラボも同人TRPGから商業レーベルに来ている。

「月子は紅支部長か。①好きそうなのに」
「吸血鬼!なんと耽美なのでしょう!」
 ああ、なるほど、吸血鬼に食いついたのか。
「永遠の命と口づけで交わされる血の盟約!ああそれでも飽いてしまう倦怠とその身を蝕む絶望!アンビバレンツですわ!」
「うるせえダークデイズドライブぶつけんぞ」
 ダークデイズドライブ。ツラのいい水曜どうでしょうとか、汚いFF15とか呼ばれてる吸血鬼と臣下のイケメンたちが車で旅をするという説明だけ聞くと全くよくわからない謎のシステムだ。冒険企画局はこういうの良く出すよな。ちなみに齋藤ゲー故、死にやすいとされる。今なら齋藤ゲーなら獸の森が一昔前に出ている。
 本来は、耽美なけものフレンズこと、ドラクルージュをぶつけるべきなのだろう。いずれ紹介してみるか。

「私はこのソラリスオルクスにします。オルクスはかなりの強データに見えます」
「まあ、その通りだ。支援は強いよな」
 このゲームに関して言えば、支援は非常に強い。ただ、その強さの性質は『他のPCを強化する』方向であるため、他のPCの活躍の機会を妨げないので非常にオススメだ。
「ただ一番気に入ってるのは……」
「なんですの?」
「メジャーアクションです」
「ダイス振らなくていいしな」
「……認めるのは癪ですが、その通りです」
「まあまあ、軍師タイプな感じが似合っていいんじゃないか」
「……それは、褒め言葉として受け取って良いのでしょうか」
 ちょっと不満げな花凛。TRPGで軍師様というのは割と敬遠されがちなので気を付けよう。助言なら良いのだろうが、いわゆる『指示厨』は嫌われる。線引きは難しい。
「出来れば、ダイスを振らずに勝利できればいいのですが」
 スイフリーみたいなことを言い出す花凛。ゆうやけこやけか、鵺鏡を与えるべきなのだろうか。花凛がほのぼのあったかロールプレイングげーむを気に入るかと聞かれると、正直疑問が残るが。


「というわけで、今日のセッションを終わります。皆さんありがとうございました」
「いやー楽しかったなー。先生のやるヒロイン、可愛いよね」
 うーんと背伸びをするふわり。女性PLから見て、自分の演じているヒロインがかわいいといわれるのは、嬉しい反面、喜んでいいのかよくわからない多少複雑な気分でもある。
「そうか?まあ世の中の萌えヒロインは、要するにみんなモテねえおっさんがセリフ書いてるからな」
 そしてこのライトノベル非実在系少女である君らも言ってみればモテねえおっさんが動かしているため、当作のヒロインが俺が演じるヒロイン像について言及することは、非常に高度な自己言及と論理回路のループとロジック崩壊を引き起こし、クリティカルエラーが発生して画面が青くなり電源ボタンを長押しして強制シャットダウンすることになる。
 ただ、人形遣いに恋をすることと人形に恋をすることはおそらくだいぶ違うため、諸兄におかれては安心して人形にガチ恋されたし。
「……非常に夢のない回答ですが、真理ですね」
 花凛はさもありなん、といった顔を浮かべる。我々は高度な二重思考の持ち主であるため、美少女を演じる目の前のオタクを美少女と認識することができる。2+2は5だ。
「……それを言うなら、少女漫画の、イケメンも、そう」
 そういわれると、まあそうなのだろう。俺は少女漫画はアニマル横丁動物のお医者さんぐらいしか読んだことがないが。あとはぼんくら陰陽師の鬼嫁か。アレはキャラ文芸だが。めっちゃ良かったのでオススメだ。
「先生の好みの女性は今日のセッションのヒロインの子のようなの方なのでしょうか?女子高生がお好きなのですか?まあ、先生ったら!教師と教え子の禁断の恋!わたくしまだ心の準備が……」
 唐突にトリップし始める月子。いつもの発作だ。戻ってこーい。
「で、ゴローちゃんの好みのタイプってどういう人なの?」
 ゲスな笑顔で質問してくるふわり。どう返せばいいものやら。
「……黒髪ロングでおっぱい大きい子、ということにしてくれ」
「あははー、分かりやすいね」
 人が言うほど、分かりにくい奴じゃねえんだよ俺は。
「まあ、先生ったら……」
 月子は頬に手を当て、うっとりといった様子で顔を赤らめている
。……そういえば、よく考えたら、月子は黒髪ロングでおっぱい大きい子である。
「……追加条件、大人な女性だ」
「そんな!」

 

TRPGオタの俺が女子高の文芸部の顧問になって困達とセッションするハーレムラノベ 第四章

第4章 ゲームのルルブを壊してしまったのですが!

 

「あっ」

 書籍が一冊、裂けて崩壊した。分厚い紙の束の断片が床に落ち、鈍い音が響いた。

 とうとう恐れていた事態が起きてしまった。適当にかばんに放り込んだり回し読みしたり、劣悪な保存状態で酷使しまくっていた俺のクトゥルフのルールブックが自壊してしまった。

「……ごめん、先生」

 申し訳なさそうにしている小雪。最後に読んでたのは彼女だ。

「物はいつか壊れる。しょうがない。怪我はないか?」

「私は、大丈夫。……!?」

 ルルブの断片を拾い上げようとしてしゃがんだ小雪が急に止まる。どうしたんだろうか。

「……」

「……なるほどな」

 小雪が無言で拾い上げてこちらに見せてきたページは87ページの「アレ」だった。なるほど、ちょうどアレが表に来るところで崩壊しやがったようだ。急に出てくると普通にビビる。SANチェックものである。周りではギャーギャー声が上がっている。

 

「さて、どうしたものか……」

「年期の入った一冊でしたものね…」

「一応読めねえことはないが、流石に買い替えの時期か…」

 さよなら。俺のルルブ。7年ぐらい思い出をありがとう。安い買い物ではなかったし、重いし読みづらいしなんかボロクソ言いまくってるが、価値ある図書だったよキミは。

 ぶっちゃけ、海外の現行は7版らしいので微妙に今さら6版買い直し?感はあるっちゃあるが、いつ版上げされるかも正直疑問なので、買っちゃってもいいだろう。6000円+税は普通にプロレタリアートには痛いっちゃ痛いが、メスガキにはともかく大人のオスが払えない金額ではない。

 さて、帰りに横浜のイエサブに寄るか、藤沢のジュンク堂にするか(ビッグカメラのFAGが安いんだよな)。残業が無ければ間に合うのだが。最近では町田のアニメイトなんかにもクトゥルフコーナーが出来ていたな。町田のイエサブは最近改築して広くなったのでデュエルスペース前を通らずに済む。アマゾンで他のルルブの電子版のついでに買うのもいいがな。

 

「そういえば、この本いくらぐらいなのでしょうか?」

「6000円」

「……そんなに、高いの?」

「高い」

 このルールブック、クトゥルフ神話の資料集・データ集としての比重がかなり大きいため、結構な値段になる。現代日本舞台をやるのにほぼ必須なサプリメント(多くの場合、TRPG界ではサプリメントは栄養剤のことではなく追加データ集、・コンテンツのことを指す)2010も買うと諭吉先生が吹っ飛ぶ。そろそろ諭吉じゃなくて別の人になるらしいがな。

「……もし弁償とか考えてるなら今回は別にいいからな。故意じゃないし、そろそろ寿命だったし」

「……いいの?ごめん、先生」

 まだ罪悪感は感じてるようだが、ちょっと、小雪の表情が柔らかくなった気がする。まあ、高校生に6000円はデカいだろう。ルールブックを借りたり共有で使っているグループも多いだろう。そういう場合物損問題や、いわゆる「借りパク」(この言葉、結構定義ブレがあったりするようだが)が生じたりしてしまうこともしばしばある。基本的には他人の所有物はなるべく大切に扱うべきであろう。が、まあ、今回のケースはしょうがない。



「そういえば先生、ルールブック、私たちも買った方が良いのでしょうか」

直球で問題提起をしてくる月子。作劇上の都合とはいえ、露骨である。

「買うのがベストなことは確かだが、今のところ正直お前たちは無理に買う必要はない。お前ら位の歳なら、もっと大事なものに金を使うのもいいんじゃねえか」

 部費で一冊ぐらいは備品として申請が通りそうなこと(学校図書室や図書館の中には実際に寄贈されたルールブックの貸し出しを行っている場所もあるとか。クトゥルフのものかは知らないが)、俺が一冊持っていることを考えるとプレイグループに何冊かある状態なのでまあ、無理に一人一冊買う必要はないというのが一般的な見解なのではなかろうか。

 

「ゴローちゃんにさ、買ってもらえばいいんじゃない?一緒にごはん食べ行くとかなんかで」

パパ活をやめろ」

 浪費癖を直す気のないふわりに、そこまでしてやる義理はない。

「えーでもゴローちゃん敗北者じゃん」

「……別に取り消すつもりはないが、女の相手は仕事で間に合ってる」

 現状、女性に話しかけられる場合10割業務上の厄介ごとが持ち込まれる時なため、これ以上しょうもないに問題解決に当たらされるのは勘弁してほしい。

 ……あと、ちょっとは傷つくので面と向かって悪口を言うのはやめようね。

 

 ツイッターにおいてはルールブックの実所持を巡って非常に高尚な痴話ゲンカ、通称「TRPG学級会」がしばしば繰り広げられているが、「オフラインセッションならプレイグループに一冊、オンラインセッションなら全員が所持するのが理想的」というのが一般的な見解のようだ。

 ただ実際は身内同士ならサンプルキャラクターを使ってGMのみ所持ぐらいの状態でオンセをやることもしばしばあるし、一概には言えない。クトゥルフの場合あまり公式のサンプルキャラシートの配布などが充実しているとは言い難いため、多くの場合一からキャラクターデータを作成することになる。一からキャラビルドをするような場合、一般的にはルールブックが手元に必要になるが、クトゥルフの場合はキャラクターの作成ルールが比較的簡単なため(スキルデータの吟味などがほぼ必要ない)、というかPCのデータの大半が成功率と能力値という『数字』で構成されているため、ルールブックが手元にない状態でも割と出来てしまう。このあたりも未所持問題の一因となっているのだろう。

 

「キミが全くの初心者で、周りにTRPGのプレイヤーがいない状態で、まともな人たちとオンラインセッションがしたいなら、おとなしく買って読みながら、まだ見ぬセッションに対しての想像と期待を膨らませつつ望むのが丸い」というのがおそらくの現状である。最近はほとんど見かけないがたまーに体験卓的に未所持対応の慈善事業みたいなこともされている方もいらっしゃるようなので、世話になってみるのも悪くはないだろう。

 すべての場合において100%倫理的にふるまうのは無理なので、懐に余裕があれば出来る範囲で買ったらいいんじゃないだろうか。ぶっちゃけルルブ不所持自称玄人PL専なんてそんな昔の漫画のわかりやすい悪役みたいな「TRPGごっこ」やってる連中が実在するとは思えない。少なくとも、俺は見たことはない。いや、実際にはいるのかもしれないが。

 

 実際、結構ルールブックは読み物として(それなりに)面白い。昔、ゲームの攻略本を読むのが結構好きだったのだが、そんな感じだ。読み物としては6000円分の価値はあるのではなかろうか。重量があるので押し花やプラ板の圧着の重石としても有用だ。

 クトゥルフ神話の資料集としてもそれなりに有用だし、呪文の一覧なんかけっこう想像力を掻き立てられるのではないだろうか。ただ、正直クトゥルフ神話の参考書としては、新紀元社の『図解雑学シリーズ:クトゥルフ神話』とかの方が分かりやすい(データの数値は乗ってないが)。単価も1500円ぐらいだしな。(著者のバカの出身校の)図書室にも置いてあったし。

 

「先生、そういえばこのダメージボーナスの算出、端数はどうするのでしょうか」 

 キャラ作成をしていた花凛が尋ねてきた。

「悪いが検索してる時間がない。とりあえず今回は切り上げで」

「…承知しました。ですが、そうは言われても、気になります」

 ルールブックはある種教科書のようなものだ。多分そういう細かいルールが気になりだしたら、ルールブックの買い時である。大体の基本的なことはそこに書いてある。

 で、実際はこの処理はどうなのかって?この先はキミの目で確かめてくれ!

 

次の活動日、花凛の机にはルールブックが置かれていた。

「花凛、お前、ルルブ買ったんか」

「ええ、図書券が余ってて。データも研究したかったので」

「それはいいことだな」

  正直、俺もクトゥルフのルール把握は結構あやふやなので助かる。俺は決定的成功とか対抗ロールのやり方とか雰囲気でやっている節がある。あやふやでもGMして大丈夫なのかって?なってしまうぐらいにはCoCのルールはあやふやだったりする。

「ただ一点だけ、クトゥルフの場合は、多分PL回数のが多いうちはデータ部分は見ない方が楽しいかもしれんぞ。ある意味ネタバレだからセッション中神話生物に初見で遭遇する楽しみが薄れる」

「……それ、先に言ってくださいよ!だいぶ読んでしまったではないですか」

 正直高い割に(特に初心者PLが)プレイ時に不要となるデータ集などの部分が多いのも確かなので、プレイヤーハンドブックとKPガイドみたいなのに分けてくれんかなーと思うのも確かである。重いし。厚いし。読みづらいし。

「まあまあ、数値から何まで丸暗記出来るワケではないだろうし、買ったことは無駄にはならないと思うぜ。初心者への心構えのプレイガイドとかいろいろ書いてあるしな」

「……すみません、データにしか興味が無かったもので、その辺はまだ読んでません」

「えぇ……」

 

TRPGオタの俺が女子高の文芸部の顧問になって困達とセッションするハーレムラノベ 第三章

 3-1 このtrpgの本当の強者の歴史から始めます!!

ここらで一つ、俺なりにTRPGというもののオリジンを振り返ってみたいと思う。

 論文における「背景」パートだと思ってくれ。ぶっちゃけ、俺が見聞きした情報を寄せ集めただけだから、正確性にはあまり自信はない。

  発祥となった舞台は1970年代のアメリカだ、と俺は聞いている。アメリカ人達は兵隊さんのメタルフィギュアをコレクションしていたらしい。シックスセンスの子供が宝物にしてた兵隊さんのアレだな。

 最近では日本でもまたウォーハンマーみたいなミニチュアゲームがヨドバシカメラに出てくるぐらいにはブームみたいだな。(売れてるのだろうか?)

 このミニチュアを戦わせて遊ぶウォーゲームのローカルルールが、TRPGの基盤になったらしい。『ウォーゲームでいい感じに試合を盛り上げて、なおかつ上手に負けるプレイヤー』がいて、ただ南北戦争ごっこするだけだった時代から、駒にキャラクター性という個性を付けて、物語性を重視する遊び方へとシフトしたらしい。

 海戦シミュレーションのゲームの駒を、軍団や兵器から個人にしてキャラクターにスポットライトを浴びせるようにしたところが始まりのようだな。

 この遊び方を受けて、1974年、ファンタジー世界を舞台にした原初のRPG『ダンジョン&ドラゴンズ』が完成したそうな。開発者のゲイリー氏は5児のパパンなのだが、なかなか夜な夜な家に帰ってこないゲイリー氏を、嫁さんが浮気してると勘違いして現場を抑えようとしたら、単に男だらけて徹夜でボドゲやってただけだったり、会社のプリンターで同人誌刷ってみたり、娘の彼氏をセッションに誘って始めたキャンペーンが娘と彼氏との関係よりも長続きするなど、謎のエピソードがてんこ盛りのゲーム狂というなかなかアレな人だ。某Fの付く有限会社の社長といい、TRPG会社の社長は子だくさんになる傾向にあるのだろうか。統計を取ろうにもn数が少なすぎて何とも言えないが。

 D&Dは当時ブームだった指輪物語の世界をモチーフにしたゲームだったようだ。ゲイリー御大自身は蛮人コナンとかそういう路線のファンタジーの方が好きだったらしいが。現代日本が発祥だったらなろうラノベっぽい感じになるんだろうか。異世界転生路線でアリアンロッドが失敗したらしいが。



 このダンジョン&ドラゴンズが日本に持ち込まれ、日本でもRPGの歴史が始まったようだ。日本でも遅れてファンタジーブームが起こり、富野由悠季御大の作った異世界転生ロボアニメというオーパーツ聖戦士ダンバインに一年遅れ国民的RPGと呼ばれる『ドラゴンクエスト』が発売されたようだが、「ドラクエ」についてはもはや解説することもないだろう。ぶっちゃけ、日本じゃTRPGよりもコンピューターRPGの方が流行ったみたいだな。

 平成元年には俺はやったことが無いが初代ソードワールドが発売され、圧倒的シェアを誇っていたようだ。リプレイが非常に売れていたようだ。実はこのリプレイは日本発祥だったりするそうだ。Q&Aブックの清松先生の「常識で考えてください」が非常に印象的だったな。空想科学読本のようだった。そういえばと学会の会長山本弘センセもSNEの人だしな。ピュリフィケーションで血液真水化して一撃必殺してやろうとか花凛が見たら喜ぶかもしれないな。スリープしたキャラクターを水に沈めるとどうなる?みたいなQ&Aは「水の中で眠り続ける少女、美しい」水野先生と「普通に死ぬだろ」の清松先生の作家性の差みたいなのが見えて面白かったな。

 90年代末、TRPGは冬の時代を迎えたという。マジックザギャザリングとかとブームがかち合ったり、ネトゲが台頭してきたり、大量に作られ過ぎて粗製乱造で品質低下が起きたのも原因らしいな。当時はマギウスのエヴァTRPGとかあったようだ。リプレイは面白かったな。

 少し前までは、日本のTRPG界隈はグループSNE、FEAR、冒険企画局の三社が主に出版をしていたようだが、現代はそこに同人TRPGがシェアとして新しいブームとなりつつあるようだ。バーチャルyoutuberなんかもしばしばクトゥルフで遊んでるのを見かける。

 

 また2007年には動画サイト『ニコニコ動画』が生まれた。これの解説も必要だろう。

 最初期はyoutubeからの違法転載が主だったようだが、二次創作、料理の動画から面白いバカまで、何でもありの無法地帯だったようだ。俺は『例のアレ』大好きだが。御三ゲイとか是非履修してほしい。

 その一ジャンルとしてゆっくりボイスを用いてゲームなどを実況するゆっくり実況動画が生まれ、その中でもTRPGを実況する動画も生まれたようだ。

 ゲイリー・ガイギャックス氏が亡くなった年、2008年に販売されたソードワールド2.0をアイドルマスターズのキャラクターがプレイする卓M@Sシリーズなんかが人気だったようだな。

 ゆっくTRPG系の中でも一段人気だったのがクトゥルフものであるようだ。かなり人気のあった某動画は版権関係でいろいろあったようだがここでは詳しく触れるのはやめておこう。最近では肉声セッションのリプレイなんかも出てるようだな。

 現代ではRTAをエンタメ化したbiimシステムやボイスロイド実況とかが人気があるようだな。MTG×ボイスロイドの動画とかが地味に増えているようだ。今はマジックアリーナとかも出てるしな。

 宣伝ばっかに力入れて動画周りの機能を改善しない企業体質のせいでオワコン化が激しいが、まだ面白いものも残っている。



 そして時代はツイッターへ。

 SNSにおけるTRPGの募集も、いろんなところでされるようになっていったようだ。

 現代日本では、ネットの普及によりオンラインでのセッションが幅広く親しまれている。

世界最大のオンセ募集サイト、ツイッターでは今日においてもしばしばセッションの募集やTRPG学級会など様々な議論(痴話ゲンカ)が交わされている。

 非常に有用なオンラインセッション用ツール「どどんとふ」がオンラインでのセッションのハードルを下げたようだ。便利だ。どどんとふも2020年にはFLASHの終了とともにサービスが終了するとのことだがな。跡目争いが続くだろう。

 体感ではここ数年はコンベンションなんかも勢いが増している。多くのセッションが同じ会場で行われるという不思議な空間だ。

 ぶっちゃけ、同じ会場でセッションをたくさんやる意味はあるのかというのは疑問だが、おそらく「人」に意味があるのだろうな。

 このあたりが今日のTRPGの情勢と言って良いだろう。

3-2 あなたを『校則違反』と『賭博罪』で訴えますッ!

 職員室である。

 というわけで、今日も文芸部室に向かおうとしたのだが、いつもはあまり話さない上司の先生に声をかけられた。

「十文字先生、生徒達と賭博行為をやってるって本当ですか?」

「ファッ!?どういう意味ですか?それ?」

「いや、文芸部室で先生たちがサイコロ振ってるのを見たという噂を聞きまして…」

 ああ、なるほど。何らかの理由でセッションの際ダイス振ってるのが賭博行為と勘違いされたのだろうか。

 昔、父に筆箱にダイスを入れているところを見られて「おめえの筆箱はバクチ打ちの筆箱か」と言われたことがある。おそらく世間から見て多面体ダイスを持ち歩いてるのは博徒(九割)かMTGプレイヤー(九分)かTRPGプレイヤー(九厘)ぐらいの割合だろう。

 D&Dも登場当時は新しい娯楽が理解のない人間から犯罪の原因だとやり玉に挙げられることが世の常であるように、やはりその手の団体に叩かれていたようだ。悪魔崇拝を助長するゲームとか言われてたみたいだな。

 現代日本におけるTRPGも未だ世間に浸透しているとは言い難い。歴史は繰り返す、ということだろうか。

「いや、私もこんなことはやりたくないんですけどね、立場上、監査しなければいけないので。まさかとは思いますが、十文字先生、されてませんよね?ギャンブル」

「いや流石にやりませんって。懲戒免職になっちゃう」

 どうやら思わぬ形で生徒指導の先生の手を煩わせてしまったようだ。非常に申し訳ない。

「少しこの件についてはお話したいので、後ほどお時間よろしいでしょうか」 

「……承知しました。説明すると長くなるので、ちょっと考えをまとめておきます」

 

「あ、先生、ごきげんよう!」

 真っ先に挨拶をしてくる月子。アイサツは大事。忍殺にもそう書いてある。

「ああ……」

「先生、なんだか悩まれてるご様子ですが、何かあったのでしょうか?」

「お前たち……もしかしたら、もう部室でセッションは出来なくなるかもな」

「え!?マジ?ヤバいじゃん!なんで!?」

驚いた声を上げるふわり。目がまん丸である。

 

「……というようなことがあってな」

「なるほど」

「お前たち、何か原因に心当たりはないか?」

「山吹さんが授業中内職でキャラクターシートを書いてるところを見つかってしまったようですが、関係ありませんよね?」

 …いや、どう考えても原因はそれだろう。

「……先生に怒られて、TRPGっていうゲームだって説明したら、もっと怒られてた」

 そうだな。普通に校内はゲーム禁止だもんな

「筆箱の中の大量のダイスを見られたのも良くなかったようです」

 そうだな。普通の人が思い浮かべるサイコロ使うものといえばチンチロだもんな。普通そんなことするのはカイジ読んだアホな男子中高生ぐらいなもんだ。

「はぁ~~~.....このおバカ…」

 思わずクソデカため息が出てしまう。

「えへへ、バレちゃった」

懐かしの「てへぺろ」をやるふわり。

「お前なぁ……」

「ごめんゴローちゃん」

「しょうがねえ。じゃあちょっと裁判行ってくるわ」

「んじゃ、頑張ってね、ゴローちゃん」

「頑張ってじゃねえよお前!おめえもがんばんだよ!」

ふわりを連行しつつ、俺は裁判所もとい会議室へと向かった。

 

 全体的な職員会議を開くほど先生方も暇ではないので、部活動を総括している生徒指導の先生と校長とふわりと俺の四者面談となった。

「で、先生はそのTRPGというものが教育上有意義である、といいたいのですか?」

「……主訴としては、そういうことになります」

 先生方にTRPGの歴史についてザックリとプレゼンをしてみた。ワンチャンあるのは、正直こういう方向性で攻めるぐらいしか俺には思いつかなかった。

「授業中の内職を助長するものが健全とは思えないのですが……」

 生活指導の先生の最もなツッコミが入る。

「いやそこは本当に申し訳ございません」

「いや~すみませんうちのゴローちゃんが…」

 お前も謝れや!

 とにかく、ガイギャックス御大は、「RPGは正義の力が悪の力に勝つ事を教えてくれる」みたいな感じのことを言っていたらしい。

「でも、私は正義だとか道徳とか、そういう大それたことを言うつもりはないです」

「ほう?」

「ただ……うまく言えませんが、協調性とか、友達の大切さとか、そういうものなら身に付くと思います」

 これは、単なる俺の実感だ。

「ほう……」

 先生方は吟味するようにこちらを見られていた。どう、評価されているのだろうか。

「……俺から言えるのは以上です」

「……わかりました。これにて解散とします。結果は後程通知いたしますので」

 会議部屋を後にする。今は、今後の活躍を祈られないよう祈るだけだ。



「はぁ~疲れた。何とかなって良かったよ~。やれやれ」

 やれやれ系主人公ごっこをするふわり。今回お前クレヨンしんちゃんみたいだなお前な。

「……お前自分がなにしたかわかっとんのか」

「えへへ、ごめんて」

「いいか、ふわり、出来る範囲でいいから人の話はちゃんと聞け。TRPGでも、普段の人間関係でも基本だぞ」

「はーい、わかってまーす」

 クソテキトーに返事をするふわり。お前ホントにわかっとんのか。

 それはともかく、今回の裁判の結果はどう出る事やら。あとで占い感覚で振った2d6はの出目は8だったので、期待値(5とか4とか諸説あるが)より高いし成功寄りだよな、これ?まあ実際の結果は待つしかない。

 

 もし今回の出来事がTRPGのセッションなら、「もしTRPGを一緒にやっていただいて、これが教育上有意義と今後の部活動でのセッションを認めていただけますか?」

『いいでしょう、そのかわりあなたが負けたら文芸部は即廃部!あなたは残業2倍ですよ、十文字先生!』みたいになるべきところだったのだろうが、残念ながらそんな登場人物が全員TRPG脳のホビーアニメみたいな面白展開になることはなく、セッションをやるのは部活中に限ること、授業中にキャラシート書くのは禁止(当然ではある)などいくつかの制限付きでセッションは許可されることになった。まあ部員が一定数いて顧問が確保できている部活がいきなり廃部になることはなかったようだ。

 とある少年の死亡事故によって、自殺を助長するゲームとしてバッシングされていたD&Dだが、一説によると、その時に行われたアメリカのある調査によれば、TRPGプレイヤーは一般人に比べて死亡する確率が低いそうだ。そしてこの反対運動は主導者がガンで死亡したことにより収束したという。つまりこれが何を意味するのかというと、TRPGは今はガンには効かないが、いずれ効くようになるということだ。

 今回のケースも、似たようなものだろう。反対派はガンで死んでないが。真面目に仕事されていただけの先生がいきなり死なれても困る。

 あとで聞いたところ、「いつも死んだ目をしている十文字先生があんなに熱く何かについて語ってるの初めて見たし、説明が分かりやすかった」ということで認めて頂けたようだ。「そこまで情熱を割けるものなら、文芸部らしさもあるし許可しよう」ということらしい。ご都合主義である。(その後に小声で聞こえた「普段の授業でもこの説明能力を発揮してくれればね…」はちょっと傷ついたが)もしこれでやろうとしてたルルブの表紙がBBTとかだったなら流石にアウトだっただろう。危ないところだった。サンキュータッコ。

 

 この一件を受けて、ふわりのヤツもちゃんと真面目に授業を受けるようになって……なかった。アイツシャーペン握りながら居眠りしてやがる。チョークでも投げてやろうか。

 そう思ったが、ヤツのよだれで汚れていたノートには板書の形跡があったため、チョークを投げるのはやめておいた。

 

第10回 「心傷外装TRPGコンヴィクタードライブ」 TRPG紹介

 このTRPG紹介も、とうとう2ケタの大台に乗ったが多いのか少ないのかがイマイチピンとこない。

 知っての通り、俺はここ1年以上オンセしてなかったせいで脳内で架空の女子高生達とセッションをしたりしてたが、久しぶりにオンセしたのでまた記事を書こうと思う。

 今回やってきたのは同人TRPG心傷外装コンヴィクタードライブだ。発売元はグループSGR、ワールドデザインは乃継アラタ氏。システム面はシグレ氏著だ。グループSGRさん主催のTRPGイデアコンテストの受賞作のようだ。プレイ回数はPL1回。

  簡単に言うと近未来の横浜でコンヴィクターと呼ばれるパワードスーツを纏って、悪い奴らと戦うTRPG だ。

https://convictordrive.wixsite.com/website/blank-1

 

①キャラクター周り 

 

 キャラクタークラスは大きく分けて四つ。パワードスーツ(コンヴィクター)の種類によって分類される。オールラウンド勇者型のマイティ、タンクのストレングス、火力特化のシューター、速さが足りないランナーだ。

 

 

 スーツは電源オフのセーフモード、ミドルで使える一部起動のスタンバイモード、クライマックス用のフル稼働のアクティブモードがあるぞ。

 コンヴィクターはトラウマが無いと装備できないため、そのトラウマに関係ある事件概要(他所から見た経緯)と心傷詳細(自分から見た詳しい内容。非公開)、フラッシュワード(変身のキーワード的なの)の三つを決める必要がある。

 装甲はスパロボで言うところの実弾属性とビーム属性、ポケモンで言うとぶつりととくしゅの二種類があるぞ。

②ルール周り

 基本的に判定はd10をたくさん振って5以上の出目の成功数を数える感じだ。

 ミドルの判定は失敗したPCを一度だけ補助できるリカバリー判定が面白いな。

 遅延カウンターというデッドラのリトライの発展系みたいなのもあったりする。手間取ってると事態が悪化してクライマックスでペナルティをもらうぞ。

 ダメージは成功数がそのままダメージになる。命中判定とダメージロールの省略感はいい感じだ。

 ラウンド進行は下に数えるラウンド式。なんとなくデッドラやネクロニカに似ているようだ。

 戦闘マップはX軸×Z軸の3×3という高さの概念がある二次元マップだ。なかなか面白い発想だ。

③世界観

 

 今よりメカトロニクス技術が発展した202X年の近未来のよこはま市が舞台だ。赤レンガ倉庫とかもある。

 日本政府は新技術を取り入れた特別区、よこはま区を設置、だが輝かしい未来の街には、新技術を悪用する新しい犯罪も芽生えていった。ナノマシン技術の応用で超パワードスーツ、コンヴィクターを利用した治安維持組織「DRIVE」を結成、心傷を抱えた不安定なヒーローたちは新型犯罪に立ち向かうのであった…みたいな感じだ。

 たぶん関内の歌広場とかクッソ治安の悪いゲーセンとかファッキンサブカルシティ桜木町とか、よこはま駅にはアニメイトとかイエサブの近くの八百屋さんとか殺人事件が起きそうなほうれん草ネットカフェとかもあるのだろうな。

④サポート

公式サイトにリプレイとかいろいろあったぞ。サンプルシナリオは田中りとます氏著。

 ルルブ自体にかなり誤植が多いみたいなんで、公式でのエラッタが待たれる。「装備負荷(ゲーム用語)」→「装備不可(誤植)」とか結構致命的じゃなかろうか。大剣は文字通り革でできた鎧であり、BEST BINDだ。

⑤総括

 多分ワールドデザインの乃継アラタ氏は攻殻機動隊として遊ぶことを想定して売り出してるんだろうが、どうにもパトレイバー感漂う感じのシステムだ。

 

 

 

 

 アイアンマンとかタイバニとか特撮などのヒーローものが参考作品として挙げられてるが、ヒーローものというよりは特殊部隊ものってテイストが強い。みんなで幸せになろうよって感じだ

 フラッシュワードは完全にシノビガミあたりの奥義的なおもちゃになってしまうあたりエモの追及は難しそうだな。即席で遊ばなければまた違うのだろうか。

 ルール周りは体感デッドラの1.2倍ぐらいの重さ。結構頑張って作ってる感じがするからオフセで1日遊ぶには楽しいんじゃないだろうか。

 個人的にはキャラ作成のデータ取捨選択が若干ややこしいがパトレイバーとして遊ぶ分には割と面白いと思うぞ。

 難点としては攻殻機動隊とかパトレイバーなんかはできるだろうが、そこまで出来るシナリオの幅は広くなさそうなあたりか。

 

値段はイベント頒布価格2,000円​、店頭販売価格2,678円、俺は初利用したこかげ書店でもろもろ込で2999円だった。イエサブならもうチョイ安く手に入るのかもな。

 

満足度 70%

初心者へのおすすめ度 ☆4

個人的な好み ☆4

 

こういうのが好きな人にオススメ

パトレイバーとか特殊部隊ものが好き

・派手に活躍したい

・パワードスーツとかメカものにロマンを感じる

・推奨人数:~四人

 

遊び方の例

 ルルブ付属のサンプルシナリオ「hello,drive」で遊んできたぞ。

 正義の味方になりたかったシューター、切宮噤だ。

https://www.nicovideo.jp/watch/sm31683453

 サンプル故あまり詳しく内容には触らんが「一年ぶりにオンセやったら気合入りすぎてダイス目が走りすぎた結果、ボスがほぼワンパンで死んだ」「ヒロインがめちゃくちゃかわいかった」位の内容はお前たちに教えてやろう。

 

今回は「カルロス後藤」を例にナラティブを説明しよう

 カルロス後藤という単語だけでは正直意味不明だが、こういう積み重ねが生じる。

 discordがなんとなく不調→ディスコのリージョンをブラジルに変更しよう→ん?このシナリオPC達の上官の名前が決まってないぞ→やべえブラジルの下りのせいで上官カルロス山田とかそんな感じにしか思えんのやけどw→→まあいいや、んじゃ上官のイメージはこの人ね(パトレイバー後藤隊長)→脳をサンバに支配された男「あっ!カルロス後藤上官じゃん!」→「おまえいい加減カルロスから離れろよ!」(一同爆笑)

 ということでしばらくみんなカルロスと聞くだけで笑うようになってしまった。これが「ナラティブ」だ。

 

 これよりはるかに緻密な積み重ねを必要とする「エモ」をうまくやるのは難しい。シリアスなシーンでも単品で切り取るとギャグになってしまったり、シナリオの本筋と上手くからまなかったりするあたりフラッシュワードの扱いは難しそうだな。

 

 あとはセッション前日見てた「逆襲のロボとーちゃん」がなかなか参考になりそうだ。ギャグでガードが下がったところに泣ける展開をブチ込んでくるエモ作品だ。アマプラで見ろ。