第11回 「フィアスコ」 TRPG紹介
久しぶりだな。世間ではTRPGフェスがやっているようだが俺には関係ない。モンスターハントしたりゴッサムであくとうをシバいたりしてたが、TRPGの紹介も仕事の一つなのを俺は忘れていない。マルチワーカーだ。
汎用システムといえば、おまえは何を思い浮かべるだろうか?サイコロフィクション?SRS?BRP?CoCか?最悪『システム?CoC?もしかしてTRPGのこと?』とかいいそうなところを「CoCがBRPを用いたTRPGのシステムの一つである」ことを理解してるおまえはとっくにニュービーはそつぎょうして7版にそなえていることだろう。というかそういう層は多分このブログは読んでくれてないだろう。逆に好きな汎用システムはマギウスとか言い出される方はぜひ当時の話を伺いたい。
一個のルールを覚えるだけでいろんなゲームで遊べるようになる、というのはなかなかにストレスが少ない。おじさんになると新しいことを覚えられなくなるものだ。カッコいいこと言っててもお腹が出てくるのだ。
今回は「キミと大惨事を起こすTRPG」こと『フィアスコ』の紹介だ。
http://harrowhill.rdy.jp/Games/Fiasco
製作元は デザイナーはジェイソン・モーニングスター氏。翻訳はハロウ・ヒル。翻訳された日本語版が出回りだしたのは2017年ぐらいだ。
おまえのだいすきなCoCと同じでいわゆる『洋ゲー』だ。
①キャラクター周り
『フィアスコ』は汎用ルールであり、基本的に共通の世界観みたいなものは存在しない。
プレイセットという舞台設定資料を用いてキャラクターを構築していくことになる。いわばロッテとかブルボンとか森永みたいなものだ。
フィアスコにはキャラシートらしいキャラシートは存在しない。ただ、設定を書くメモ書きは結構たくさん必要となる。
プレイセットにはキャラクターの設定表が載っている。隣のPCとの間に設定(作中用語で『要素』)が配置されるので、それを元にキャラクターを造形していくことになる。
『要素』は大きく分けて『人間関係』、『動機』、『場所』、『物品』の4つに大きく分けられる。それぞれが6×6の36種類ある感じだ。『人間関係』だけはどのPC間にも必ず一つずつ割り当てられることになる。。
セッション開始前にダイスを参加人数×4個振り、この数字のダイスを拾ってPC間の『要素』を一つずつ割り当てていく、といった感じだ。6×6の表の片方ずつを2つのダイスを使って決めることになるので、結果としてPC間には2つずつ『要素』が配置されることになる。
各種の『要素』(特に『人間関係』)はPC間の関係性と定義づけられているが、実際はどちらかのPLが「これちょーだい」と分け合っていく方が多いだろう。
順番に一つずつ配置して結果4周することになる。好きな所に配置することができるので、他人がクソマジメに手酌で自分のところにカッコいいだけの設定生やそうとしてたら他PCの所に「おまえ何エモいだけのやつやろうとしてんだよ!これやれ!」と振ってみるのも楽しいだろう。
両隣りに配置された『要素』を全部詰め込むと詰め込み過ぎになるので、だいたいは各PC2つずつぐらいとりにいくことになる。ブルボンバラエティミックスをおまえ一人で食べようなどというのは欲張り過ぎだ。おまえはルマンドとエリーゼを選んだらホワイトロリータは隣の人に譲ってやれ。(パピコが配置されてる場合はその限りではない。)
②ルール周り
キャラクターが出来上がるのがオープニングフェイズだとしたら、【第一幕】が始まる。いわばミドルフェイズのようなものだ。
このゲームの大きな特徴の一つが「GMが存在しない」ということだ。みんなで話し合って展開を決めていくことになる。
進行はいわゆるサイクル制に近い。一人一手番シーンを行うことになる。
このゲームの進行の根幹をなすのは「2択」だ。
一シーンにおいて、プレイヤー達はシーンの展開をどちらかの方法で決めていくことになる。
一つは自分が提示した展開の選択肢を他のPLに選んでもらう『確立』。
もう一つは周りが考えた展開の選択肢をおまえが選ぶ『解決』の二種類だ。
「きのことたけのこどっちが好き?」を周りに聴くのが確立、「きのこかたけのこどっち食べる?」をお前が選ぶのが解決だ。
おまえが選んだ選択肢がポジティブな選択である場合が白のダイスを、ネガティブな場合は黒いダイスをPCのうちだれかが獲得することになる。どっちがポジティブでどっちがネガティブかは主観で決めて構わない。白黒のバランスとりたくなったり白いダイスばっか取りたくなるかもしれないが基本的に展開は「どっちが面白そうか」で選んで大丈夫だ。
第一幕が2サイクル終われば話に何か変異が起こる【転落】、いわばミドル戦闘が挟まり、さらに2サイクルの第二幕が始まる。それが終わればお前たちがそれまで獲得したダイスを元に結末を決める【残響】が始まる。いわばクライマックスフェイズだ。【残響】表の結果をもとに一人一シーンぐらいエンディングをやって終わりとなる。
③世界観
先述の通り決まった世界設定というものはないが、作品名の『フィアスコ』が意味する通り基本的に『台無し』とか『大失敗』が起きうるものではあるという見解は共通しているようだ。
あまり「ぼくのキャラクターの美しく完璧なストーリーライン」みたいなものには期待しない方がいい。おそらく多くのTRPGから、そして特にこのゲームからは遠いものだ。
とりあえずルールブックでは4つのプレイセットがサポートされている。GTAみたいなやつとレッドデッドリデンプションみたいなやつと遊星からの物体XみたいなやつとD&Dみたいなやつだ。
④サポート
こうしきサイトにいろいろ有志の方の解説マンガとかが載ってたりする。興味があれば見てみるといいだろう。
https://harrowhill.rdy.jp/Games/Fiasco
ルールブックの4つの他にも「フィアスコ」は実に多彩な舞台設定のプレイセットサポートしている。上のサイトの右上のフィアスコのタブのプレイセットから「公式」「許可済み」みたいなのを見るといい。
ルールブックのリプレイはスティーブだのジョイがどうこうだの「アメリカ人がアメリカ人のキャラクターを作る」という構造上馴染みのない登場人物の名前がが8人出てくるせいでなんかよく分かんなかったが、一度遊んでみるとそこまで複雑ではない。
公式のものはアメリカが舞台でとっつきづらいものが多いように感じたが、投稿作は魔法少女ものとか餓狼伝とかバジリスクとかいろいろあるのでいくつか気になるものはあるのではなかろうか。
気になるプレイセットはちょうど今開催中のTRPGフェスが舞台の「かつてJCGと呼ばれたイベント」だ。
なお、プレイセットは結構大変そうだが自作することも出来る。うぃんぐさんの作ってたハイスコアガールとかゲームセンターあらし的な『90年代のゲームセンター』が気になる。
値段に関しては俺は大昔にイエサブで買ったが2500円前後、コノスの電子書籍版が1500円、物理書籍版が2500円ぐらいだ。
amazonでは英語版しか取り扱ってないとのことだったが現在日本語版も扱ってるようだ。ただ3500円ぐらいするので注文翌日届かないと死ぬアマゾン細胞感染者以外はコノスとかで買うといいだろう。
⑤総括
GMレスで驚くほどに軽い。そしてちゃんとTRPGをやった気分になる。
GMが必要ないため事前準備がほぼいらないというのは大きい。ラクだ。
自分のやりたい事がある場合は他人に成否を任せる、やることが思い浮かばなければ二択をもらって自分で選ぶ、何もかもが都合よく行くわけではないだろうし、進行に詰まることは少ないだろう。
GMレスなため対立型みたいなムーブが比較的やりやすいのもポイントだ。協力型だと扱いにくいややヒールに近いキャラクター造形もはまりやすい。
他にはクライマックスフェイズがものすごくあっさりしてるのがポイントの一つだ。
派手なアクション映像やらなにやらが展開できるわけでもないTRPGというゲームの性質上、クライマックスはあっさりしていていいのかもしれない。平日夜やって時間食うのはだいたいクライマックスの戦闘だしな。
クライマックスにシーンを割かない関係上いわゆるバッドエンドに向かう確率が高いため、いい方向で終わるとは限らないためちょっと物足りないところはあるかもしれない。
「仕事から帰ってきて9時に集まって日付が変わるぐらいに終わる3時間だけセッションやって翌日の仕事に備えて寝るシステム」としては非常に優秀なのではなかろうか。
ダイス目部分が中盤あたりであまり意味をなさなくなってしまう点、ミドルで黒ダイスばっかり引いて不遇だったキャラクターが苦難を糧に最後に幸運が巡ってくる…みたいな展開があまりできないのは構造問題かもしれない。まあ、シンプル方面に完成度は非常に高いルールなのでこれでいいのかもしれないが。
あとなんかこのゲーム、たまに【動機:セックスしたい】みたいなものが含まれているせいか一応18禁要素が含まれているとされるが普通にやる限り別にエッチな要素もグロイ要素もない。
逆に18禁なことを逆手にとって南国アイスホッケー部+ぬきたし+下セカみたいなプレイセットをやってもいいということなのだろうか。絶賛開発中なのでやりたい生ハメイトと青藍島住人としもねた星人とSOX隊員は是非連絡をくれ。
抜きたしオリジナルサウンドトラック 抜きゲーみたいな島に流れる音楽はどうすりゃいいですか?
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他にもグルメバトルものとかレディ・プレイヤー・1路線とかボディビルものとか真面目(?)なプレイセットの自作も考えてるので遊びたいところだ。
満足度 95%
おすすめ度 ☆5
好み ☆5
こんな人にオススメ
・TRPGはストーリー要素だけあればいい
・自分のPCがひどい目に合っても許せる
・NPCっぽいPCがやりたい
・翌日仕事でクライマックス戦闘をやってる時間がない人々
遊び方の例
今回遊んだのは『仁義なき抗争』。
一言で言うと「ヤクザもの」、もうちょっと詳しく言えば「先代会長が殺害されて組員達が跡目を巡ってバトルするタイプのネオヤクザもの」だ。龍が如くとかアウトレイジとかジョジョ5部とかそんな感じの雰囲気感だ。
暗殺されたマツタケ親分の跡目を巡る権謀術数に、カエンタケのサイボーグヤクザ・杯焔で挑んできたぞ(カエンタケは指定暴力団竹書房→きのこvsたけのこ抗争の延長で出てきたものだ。ツキヨタケの人とかもいたぞ)
「お前マジックマッシュルームでもキメてんのか?」とか言われたが、その時キメてたのはカエンタケもとい単なる発泡酒なので問題はない。
マツタケ親分と妻の仇を取るべく調査を続けるスギノコ組の杉上左京(隣の人のPC)だが、彼の妻とマツタケ親分を殺害したのは、なんと五分の兄弟の盃を交わした杯(ややこしい)!だがサイボーグである杯は自分の意志とは無関係に操られていたのだった!裏で絵図を描いていた真犯人と『黄金の真実』とは……!みたいな感じでなんか意外とちゃんとサスペンスになって良かったぞ。残響で黒6ゾロ引いて返り討ちにあったが。
よっぽどバカ一辺倒でやらないかぎりある程度ちゃんとストーリーは出来るので終盤に向けて正気を取り戻すといいだろう。
なんとなくプレイ感覚は「デトロイトビカムヒューマン」やFGOの紫式部殺人事件のやつを思い出すな。
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このゲームをやる上で「TRPGのストーリーに必要なシナリオは『あらすじ』でかまわないということ」「もしかしたら俺がヒールを引き受けることになるかもしれないこと」位の心構えは意識しておくことは重要そうだ。