コボルドの隠れ里

多分TRPGの話とかします

TRPGオタの俺が女子高の文芸部の顧問になって困達とセッションするハーレムラノベ 第五章

第五章 ダブルクロスーーーそれは裏切りを意味する言葉。

「今日はダブルクロスやるぞ。オレのイチオシだ」
ダブルクロスーーーそれは裏切りを意味する言葉。
 FEARの矢野俊作先生(今は独立されたようだが)著、傑作現代異能TRPGだ。1958年、お医者さんと兵隊さんになり損ねた鬼才、山田風太郎の書いた伝奇時代小説『甲賀忍法帖』に端を発し、少年ジャンプ、ライトノベルに受け継がれる、いわゆる『厨弐異能バトルもの』のTRPGだ。レネゲイドウイルスという特殊なウイルスに感染した異能者、オーヴァードと、レネゲイドウイルスに心を蝕まれた怪物、ジャームの戦いを描く。
 イメージとしてはアメコミの XーMENや 魔法少女まどか☆マギカなどに近いだろうか。ぶっちゃけ、いわゆる「異能バトルもの」なら時代や舞台を差し替えて何でもできるので、若干重いルールさえ覚えてしまえばかなり取り回しのいい システムとなっている。俺が育ったゼロ年代オタク文化と相性がいい反面、ちょっと今の子には古いんだろうか。古さで言えばクトゥルフ6版が言えた義理ではないが。

 正直、若いプレイヤーたちの間では今の TRPG の代名詞はクトゥルフ神話 TRPG みたいになりつつある。だが、 COC が好きな人と TRPG が好きな人の間では、スプラトゥーンFPS が好きな人ぐらいの差がある。 TRPG 業界もクトゥルフ以外にも、本当に無数の大量のシステムが出回っている。 最近では同人の TRPGシステムなんかもブームだ。 正直俺もすべて遊び切れているわけではないし、読み切れない雑誌のページや増えていくテレビのチャンネルをすべて把握は出来ていない。が、スプラトゥーンしかやらない人にも他に面白いゲームはたくさんあるということを知ってほしいという思いはある。本当にいろんな人が、いろんなジャンルのゲームを作っている。その中にきっと、自分が気に入るシステムがきっとあるから。
 なにより、単純に同じシステムばっかやってると飽きちまうからな。3つぐらいのシステムが遊ばれてるコミュニティが、長続きすると言っていた先達がいたなぁ。
 ホラーゲーでも、インセインの他に作中の2018年ではまだオーパーツとなるスクリームハイスクールが販売されるが
 そんなこんなで、今回はダブルクロスをやることにした。 異能バトルものというのは、なんだかんだで特にオタク人種には馴染み深いジャンルであろう。

「んじゃ、ハンドアウト配るぜ」
 ハンドアウト、近代TRPGにおいての発明の一つである。キャラクター作成時にPL達に「ここは踏まえてね」という内容を三行程度で表したものとなる。多くの場合、今回そのPCが関わるNPCが書かれていたりもする。
 多くの場合おとなしく従った方が良いとされるが、細かい変更は可能だ。例えば今回のPC①の不確定な切り札くんを不良高校生にしたい、みたいなのはいい感じのアレンジだろう。
 え?PC①を新任教師にするのはどうかって?……まあ、不可能ではないだろう。

「アタシPC①?マジ?」
マジンガーZERO。良かったじゃん。主人公だ」
「マ!?右眼疼いちゃう感じ!?恥ずかしいやつじゃん!でもがんばるー。あっでもさ、変身したら服脱げちゃうんじゃね!?ヤバいじゃん!」
 それは、デモパラ/パラブラなのでゲームが違う。SNE版変身ダークヒーローTRPGだ。ウイルスではなく超能力寄生虫によって異能者となる。ファントムペインだ。焼き肉を食べて回復したりする妙に身体性にこだわった不思議なゲームだ。

小雪は閃光の双弾か」
 コクリとうなずく小雪
「二丁拳銃、かっこいいよな」
「……リベリオン、見た。あんな感じで、行く」
 ライトオタクと見せかけて、ちゃんと原典を漁る傾向にあるのが、この少女の美徳だ。
「……無感情ロールは、好き。……アンドロイドとかも、やってみたい」
 ネクロニカあたりを与えてみればいいのだろうか。ポストアポカリプスな世界で美少女ゾンビロボゲーだ。詰め込み過ぎだろう。インコグ・ラボも同人TRPGから商業レーベルに来ている。

「月子は紅支部長か。①好きそうなのに」
「吸血鬼!なんと耽美なのでしょう!」
 ああ、なるほど、吸血鬼に食いついたのか。
「永遠の命と口づけで交わされる血の盟約!ああそれでも飽いてしまう倦怠とその身を蝕む絶望!アンビバレンツですわ!」
「うるせえダークデイズドライブぶつけんぞ」
 ダークデイズドライブ。ツラのいい水曜どうでしょうとか、汚いFF15とか呼ばれてる吸血鬼と臣下のイケメンたちが車で旅をするという説明だけ聞くと全くよくわからない謎のシステムだ。冒険企画局はこういうの良く出すよな。ちなみに齋藤ゲー故、死にやすいとされる。今なら齋藤ゲーなら獸の森が一昔前に出ている。
 本来は、耽美なけものフレンズこと、ドラクルージュをぶつけるべきなのだろう。いずれ紹介してみるか。

「私はこのソラリスオルクスにします。オルクスはかなりの強データに見えます」
「まあ、その通りだ。支援は強いよな」
 このゲームに関して言えば、支援は非常に強い。ただ、その強さの性質は『他のPCを強化する』方向であるため、他のPCの活躍の機会を妨げないので非常にオススメだ。
「ただ一番気に入ってるのは……」
「なんですの?」
「メジャーアクションです」
「ダイス振らなくていいしな」
「……認めるのは癪ですが、その通りです」
「まあまあ、軍師タイプな感じが似合っていいんじゃないか」
「……それは、褒め言葉として受け取って良いのでしょうか」
 ちょっと不満げな花凛。TRPGで軍師様というのは割と敬遠されがちなので気を付けよう。助言なら良いのだろうが、いわゆる『指示厨』は嫌われる。線引きは難しい。
「出来れば、ダイスを振らずに勝利できればいいのですが」
 スイフリーみたいなことを言い出す花凛。ゆうやけこやけか、鵺鏡を与えるべきなのだろうか。花凛がほのぼのあったかロールプレイングげーむを気に入るかと聞かれると、正直疑問が残るが。


「というわけで、今日のセッションを終わります。皆さんありがとうございました」
「いやー楽しかったなー。先生のやるヒロイン、可愛いよね」
 うーんと背伸びをするふわり。女性PLから見て、自分の演じているヒロインがかわいいといわれるのは、嬉しい反面、喜んでいいのかよくわからない多少複雑な気分でもある。
「そうか?まあ世の中の萌えヒロインは、要するにみんなモテねえおっさんがセリフ書いてるからな」
 そしてこのライトノベル非実在系少女である君らも言ってみればモテねえおっさんが動かしているため、当作のヒロインが俺が演じるヒロイン像について言及することは、非常に高度な自己言及と論理回路のループとロジック崩壊を引き起こし、クリティカルエラーが発生して画面が青くなり電源ボタンを長押しして強制シャットダウンすることになる。
 ただ、人形遣いに恋をすることと人形に恋をすることはおそらくだいぶ違うため、諸兄におかれては安心して人形にガチ恋されたし。
「……非常に夢のない回答ですが、真理ですね」
 花凛はさもありなん、といった顔を浮かべる。我々は高度な二重思考の持ち主であるため、美少女を演じる目の前のオタクを美少女と認識することができる。2+2は5だ。
「……それを言うなら、少女漫画の、イケメンも、そう」
 そういわれると、まあそうなのだろう。俺は少女漫画はアニマル横丁動物のお医者さんぐらいしか読んだことがないが。あとはぼんくら陰陽師の鬼嫁か。アレはキャラ文芸だが。めっちゃ良かったのでオススメだ。
「先生の好みの女性は今日のセッションのヒロインの子のようなの方なのでしょうか?女子高生がお好きなのですか?まあ、先生ったら!教師と教え子の禁断の恋!わたくしまだ心の準備が……」
 唐突にトリップし始める月子。いつもの発作だ。戻ってこーい。
「で、ゴローちゃんの好みのタイプってどういう人なの?」
 ゲスな笑顔で質問してくるふわり。どう返せばいいものやら。
「……黒髪ロングでおっぱい大きい子、ということにしてくれ」
「あははー、分かりやすいね」
 人が言うほど、分かりにくい奴じゃねえんだよ俺は。
「まあ、先生ったら……」
 月子は頬に手を当て、うっとりといった様子で顔を赤らめている
。……そういえば、よく考えたら、月子は黒髪ロングでおっぱい大きい子である。
「……追加条件、大人な女性だ」
「そんな!」